0157-66-2255
0157-66-2255

北見小児科医師が書いた子育てアドバイス

母乳とくすり2

前回、特別なくすりを除いて、市販のかぜぐすりや病院から処方される一般的なくすりは、授乳中でも短期間なら服用しても大丈夫という話をしました。
しかし実際には、授乳中ということで医師からくすりを処方されないケースがみられます。これは医師の認識(勉強?)不足ということだけでは片づけられない他の理由がありそうです。

医師がくすりを処方する際、参考にするのが医薬品添付文書です。この添付文書が『くせもの』。
この中には授乳中の赤ちゃんへの安全が確認できていない(調べていない)ため「授乳婦への投与は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ投与する」また「投与中は母乳を中断する」などと記載されていることが多く、なんと76.7%のくすりに及びます。添付文書だけみると、授乳中はほとんどの薬剤が処方できないことになってしまいます。

乳汁へのくすりの移行に関するデータの多く(80%)がラットの実験結果であり、ヒトでのデータではありません。ラットの乳汁たんぱく質はヒトの1.8倍、脂質が3.5倍と多いことから、ラットの実験データをそのままヒトに当てはめることはできません。添付文書の記載と実際の医療の常識に大きな食い違いがあることを多くの医師が感じています。このことは授乳中のくすりだけに限りません。

たとえば小児とくに新生児において使用されるくすり全般にいえることで、実際によく使用しているくすりが、実は小児(新生児)への適応がとれていない場合が多くみられています(Off Label薬)。この点をなんとか是正できないのか、最近学会内でも大きな話題となっています。

現在、添付文書に従うと授乳中の母親に薬を処方しにくい状況にあるわけです。
しかし、前回お話したようにほとんどの薬剤は、授乳中でも安全に使用できます。
授乳の中断は、たとえ短期間であっても母親と赤ちゃんの精神的、肉体的な大きな負担になります。医師の不適切な指導で安易に授乳を中断させてはいけませんし、母親も誤った思い込みで母乳を中断しないようにしましょう。

迷ったら小児科医に相談してみてください。

Copyright © 2024 北見市 小児科 秋山こどもクリニック

小児科HOMEへ戻る