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北見小児科医師が書いた子育てアドバイス

子どもの気になる病気その③ 蚊(カ)による感染症

「人間を最も多く殺している生き物は?」というと、それは蚊です。

蚊は血を吸う際に、さまざまな病原体(ウイルス、リケッチア、細菌)をうつします。蚊が媒介する日本脳炎、黄熱、マラリア、デング熱などがよく知られています。マラリアは、ハマダラカが媒介、日本ではありませんが、いまだに世界で年間43万人もの人がマラリアで死亡しています。5歳未満の乳幼児が最も多く、WHO(世界保健機構)によれば2分に1人のペースで乳幼児が命を落としています。今年(2019年)4月23日、WHOは、アフリカの3カ国で年間36万人の子どもを対象に、世界で初めて使用が承認されたマラリアワクチン(モスキリックス)の接種を始めるというニュースが飛び込んできました。生後5〜9か月の間に3回、2歳前後に4回目の接種をするというものです。マラリア撲滅の大きな1歩になるかもしれません。日本脳炎は、まだ西日本で年間数例の発生があります。北海道では、2014年から3歳からの定期予防接種が実施されています。必ず接種するようにしましょう。

デング熱は、今後も国内で流行するの?

デング熱は、突然の発熱で発症し多くは数日で改善しますが、まれに重症のデング出血熱のため、死に至ることもあります。一方、不顕性感染(感染していても症状が出ない)が50〜80%を占めるとされています。2014年8月に代々木公園を中心とした局地的な小流行が起こり、話題になりました。デング熱は、主にネッタイシマカが媒介しますが、日本でおそらく最も身近な蚊であるヒトスジシマカ(いわゆるヤブカ)も媒介します。蚊が他の国から感染症を運んでくるのではなく、デングウイルス感染した人(おそらく無症状)が日本に来て、その人をヤブカが吸い、その蚊がさらに他の人を吸うことで感染が拡大してゆきます。結局、10月までに162例に上がりました。その後、流行はありませんが、これまでに200例前後の国内輸入例が報告されています。デング熱の流行地域は、アフリカから東南アジアにも拡大してきています。いつまた局地的な流行が起こってもおかしくない状況にあります。

胎児に影響を及ぼすジカウイルス感染症(ジカ熱)

最近、ブラジルで小頭症の赤ちゃんが数多く生まれるという問題が起きました。これは、ジカウイルスによる感染症が原因とされています。ジカ熱は、不顕性感染が80%と多く、発症しても症状は軽微です。しかし妊婦さんが感染すると胎児にも感染し、胎児の脳細胞をウイルスが殺してしまうことで小頭症児として生まれたものです。ジカ熱は、デング熱と同様にネッタイシマが人から人へとウイルスを媒介します。デング熱が発生するところには、ジカ熱が起こりえるとされています。WHOは、2018年ジカ熱の流行地域が東南アジア、インドなどにも拡大してきているとしてきています。これらの国々からの輸入感染症として妊婦またはそのパートナーが感染する可能性も否定できません。

いずれにせよ、これらの感染症を媒介する蚊は、日本で越冬することはできないため、国内での流行はあくまで輸入感染症として限局的な流行に留まることになります。

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