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北見小児科医師が書いた子育てアドバイス

子どもの気になる病気その⑨ アナフィラキシー(2)

アナフィラキシーが急速に進行してショックに至るような場合には、医療機関に搬送してから処置をしていたのでは間に合いません。そこでこの緊急時に症状の進行を一時的に緩和し、ショックの進行を防ぐための治療剤としてエピペン(アドレナリン自己注射キット)があります。ハチ毒、薬物、食物によるアナフィラキシーの既往のある人やアナフィラキシーを起こす危険の高い人は、エピペンを常備しておく必要があります。ただしエピペンはアナフィラキシーを根本的に治療するものではないので、エピペン使用後は直ちに医師による診療を受ける必要があります。

エピペン(写真1)は、注射針一体型の注射器にアドレナリンがあらかじめ充填されたキット製剤です。アドレナリンは、人の副腎で作られるホルモンで、交感神経を活性化させることによって血管を収縮させ、心臓から血液を送り出す機能を高める作用があります。この作用によって血圧と血流を安定させます。致死的なアナフィラキシーショックから救命できるかどうかは30分以内のアドレナリン投与の可否が重要とされています。

エピペンは、本人もしくは保護者が自ら注射するものです。安全キャップをはずし、大腿部前外側に押しあてます。衣服の上からでも注射可能です。(写真2)薬液は一定量しか注入できないようになっており、過剰投与の心配はありません。

日本小児アレルギー学会は、アナフィラキシーのいろいろな症状に対して表に示す症状が一つでもあればエピペンを使用すべきとしています。

北見市における2019年のエピペン処方患者数は0.15㎎キット(体重15〜30㎏)で29人、0.3㎎キット(体重30㎏〜)で133人(大人のハチ毒による処方が多い)となっています。アナフィラキシーは、自宅にいるときだけ起こるわけではありません。幼稚園、保育園、学校で発症する可能性があり、自宅用以外にも園や学校でもエピペンを常備しておく必要があります。文科省、厚労省は、園や学校の教職員のための対応マニュアルを用意してあります。エピペンの使用法を含め、アナフィラキシーに対し最善の対処ができるよう求められています。

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