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北見小児科医師が書いた子育てアドバイス

こどもとスマホその⑪ ネットゲーム依存

スマホなどのICT端末が急速に普及し、子ども社会にも大きな影響を与えていますが、その中で最も危惧されているのが 「ネット依存」という状態です。ネット依存症の診断基準はありませんが、2018年、WHOがリリースした 「国際傷病分類ICD-11」で、ゲーム障害の名称で疾患として設定されました。その臨床的特徴として①ゲームをする時間や場所 などのコントロールができない②ゲームをほかの何にもまして優先する③ゲームにより悪影響が起きているがゲームを続ける、 またはさらにエスカレートさせる、などがあります。

(頻度)
近年、中学生の12.4%、高校生の16%にネット依存が疑われ、その推計値は全国で93万人になります。この5年間で1.8倍 (2012-14、52万人)に増加しています。総務省の調査でも、依存度の高い10代が近年急激に増え、2014年度は 全体の2.9%だったのが、18年度には19.9%に上がっています。

(対策)
ゲーム依存症はさまざまな問題が生じます。全国に先駆けてネット依存症の外来、治療を行っている久里浜医療センター(千葉県)での受診前6か月の患者さんの状況を図にします。

体を動かさないため体力低下の著しい人も多くみられています。

依存を防止するという視点から見ると、パソコン、ゲーム、スマホを子どもに与える年齢は遅ければ遅いほどよいでしょう。 スマホを持たせる前にあらかじめフィルタリングを設定し、使用時間や使用方法などに関する家庭内でのルールを本人とよく 話し合って作っておくべきです。また起きる時間と寝る時間、とくに就寝時刻は必ず守らせるようにします。

ネット・ゲーム依存の状態の子どもから、保護者がゲーム・ネットへのアクセスを一方的に制限しようとすると、子どもは 反発し、起こったり暴言を吐いたり、時には暴れたりします。

子どもはどのような手段を使ってもネットやゲームを続けようとします。治療は彼らに自分の問題を理解してもらい、 自らネットやゲームに費やす時間を減らす、やめるように決断させ、それに向けて努力するように導くことですが、言うのは 簡単ですが、実現は容易ではありません。中学生以降で、親がスマホやゲームなどを取り上げて成功するのは、受験期など、 本人がある程度それを納得し、取り上げられた方が自分のためになると思っている時だけのようです。ネットなしでは生活 できない社会にもなりつつある中で、アルコール依存症の治療のようにずっと触れないでおくというのは困難です。とりあえず 節度ある使用「減ネット」が治療の目標となりますが、その中で解決のカギは、家庭との関係にあります。家族が現状を把握、 理解してあげて、ネット・ゲームとの適切な距離感、うまく付き合える方法をあきらめずに、あせらずに、一緒に考えてゆくことが大切です。

香川県はネットやゲームの依存症になるのを防ぐ目的として「ゲームの利用は1日60分まで」などとした条例を全国で初めて 制定し、令和2年4月から施行しています。参考にしてみてください。

小児科コラム

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