子宮頸がんを予防するヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種率が激減したことで、無料で 受けられる定期接種の対象を既に過ぎた2000~03年度生まれの女性では、避けられたはずの子宮頸がんの 罹患者が1万7千人、死者が4千人発生するという予測を2020年大阪大チームが発表しました。接種を 一刻も早く再開するとともに、対象年齢を過ぎた人にも接種の機会を提供する必要性をコメントして います。
HPVワクチンの接種率が1%未満のまま8年を経過している我が国の現状の政策について、WHOはワクチン の「積極的勧奨の中止」により、若い女性たちが本来予防可能なHPV関連がんの危険にさらされたままに なっており、不十分なエビデンスに基づく政策決定は安全かつ効果的なワクチン使用の欠如に つながり、真の被害をもたらす可能性がある、と批判しています。WHOは、2030年までに子宮がん を排除するために15歳までに90%以上の女子がワクチンを受けること、31~40歳の間に確実な子宮頸がん 検診を受けることを提唱しています。
現在日本小児科学会、日本ワクチン学会をはじめとする複数の学会において、ワクチンの積極的接種を 推奨しています。
H28年12月、厚労省の副反応検討部会において、HPVワクチンの今後の方向性について検討されました。 HPVワクチンは公費で接種できるワクチンであることや、接種について検討・判断するためのワクチンの 有効性・安全性に関する情報などを対象者やその保護者に対して、わかりやすく提供する方向性が 承認されました。
これを受けて、東京都はHPVワクチンに関するリーフレットを作成、各地域で講演会も開催されています。 またHPVワクチンは接種年齢が定められている定期予防接種であることを地域の住民に知らせる動きが 地方自治体で始まってきています。静岡県、岡山県、栃木県小山市、釧路市などでは、医師会が中心に なり自治体と連携した独自の取り組みによりHPVワクチン接種の啓発活動が行われています。
これらの動きに対し、2021年10月1日、厚労省の検討部会が開かれ、ワクチンの安全性や効果などについて 「勧奨を妨げる要素はない」ことが確認され、ワクチン接種について「情報的勧奨」が再開される (早ければ来年度から?)方向となりました。再開に向け、接種後に症状が出た場合の診療体制や情報 提供のあり方など、また接種対象だったのに接種機会を逃した人への機会の確保なども検討されるようです。
北見市においては、昨年度(2020年度)中学1年生から高校1年生の女子を対象に、子宮頸がんワクチンは 定期接種であることを知らせる通知を郵送しています(今年からは中学1年生を対象)。これにより これまで殆ど接種を受けられる方がいない状況から、R2年度は52人もの人が接種されています。
あなたの大切なお嬢さんと未来のお孫さんを守るために、子宮頸がんワクチンの接種を是非検討して いただければと思います。